初音ミク総研

初級者のための解説や曲・DVDの紹介他。視聴専門だよ。

初音ミクを研究した文献要約《ユリイカ編 Vol.2》

初音ミク」は「歌」を育てるソフトだ、と思う。(中略)「初音ミク」は、初音ミクというキャラクタを育てるソフトなのだ、という捉え方もできる。

 

 細馬宏通/コミュニケーション論

         『ユリイカ』(08年12月)「歌を育てたカナリアのために」

 

 

「萌え」の本質である「欲望」は、自分を表現するのではなく、他者に表現させ、その表現を所有することを要求する。この意味で初音ミクの声の調節が「調教と呼ばれるのは、その本質を言い当てている。

 

大杉重男/文芸批評

         『ユリイカ』(08年12月)「未クラシック、魅クラシック」

 

 

初音ミクのこうした逸脱性とセクシャリティにまるわる起源神話としては、アーサー・C・クラークスタンリー・キューブリックの手になる映画『2001年宇宙の旅』のHal9000が思い出される。あれこそは、もっとも原始的なヴォーカロイドではなかったろうか。

 

小谷真理/SF・ファンタジー評論

         『ユリイカ』(08年12月)「ハルとミク」

 

 

ユーザーは、〈初音ミク〉を歌わせて楽しむよりは、〈初音ミク〉の「中の人」として歌うことを楽しむのだ。 

 

石田美紀/映像文化論

         『ユリイカ』(08年12月)「『中の人』になる」

 

http://ecx.images-amazon.com/images/I/41V30DGZxvL.jpg

 

 

 

落ち込んだ時に即効で効く初音ミクの曲ベスト3

誰しも落ち込むはときがある。

 

仕事で失敗したり、

嫌なことを押し付けられたり、

勉強がうまくいかなかったり、

あてにしていたものが手に入らなかったり、

しばらく辛い日が続くとわかっていたり。

 

憂鬱で、ため息が出て、ブルーになるとき。

そんなときに、聞くと前向きになれる初音ミク曲ベスト3を、

勝手に発表する。

 

第3位

『Hand in Hand』Livetune

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自分が頑張れば誰かを助けることになれるし、

誰かが自分を助けてくれている。

自分は一人ではない、みんなとつながっているんだ。

ほっこりと、そんなやさしい気持ちになれる名曲。

ぜひミクさんの振り付けも見て欲しい。

癒されること間違いないし。

 

 

その2。

じゃなくて第2位。

『ワールドイズマイン』ryo

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歌詞は素直じゃない自己中(?)の女の子のモノローグで、

直接的には「落ち込んだ時に効く」要素はない。

だが、全体を通しての「ばかばかしさ」に救われる。

ある意味能天気なミクワールドに触れることで、

自分の「悩み」さえも、「フッ」と矮小化できる。

なお、似たような効果は

『ぽっぴっぽー』『みっくみくにしてあげる』でも確認されている。

 

 

第1位

『1/6 out of the gravity』ぼーかりおどP

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ブログ主が仕事で追い詰められたときに、

何度となく助けられた曲。

会社の机で突っ伏しながら、よく聞いたなあ(笑)

つらいことも悲しいことも、

まじで6分の1になった(気がした)。

 

みなさんも、

ブルーになって、落ち込んで、ふてくされてる時には、

イヤホンを耳に入れて突っ伏して、

しばし、ミクさんの歌声に耳を傾けてはいかがだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初音ミクを研究した文献要約《ユリイカ Vol.1》

初音ミクの記号性というのは、生身の人間だから持っている良さ、逆に言えば、生身の人間が持たざるを得ない良さを全部排除した存在なんです。そこが受け入れられたのだと思います。

             佐々木渉/クリプトンフューチャーズ サウンドデータベース開発

         『ユリイカ』(08年12月)「生みの親が語る初音ミクとアングラカルチャー」

 

オナホールで有名な典雅さんに、初音ミクを作ったことについて、人づてに褒められたことがあったんですよ。すごく嬉しかったんですね。「典雅さんにシンパシーを感じる」と言うと誤解が生じると思うんですけど(笑)、「今後、アンドロイドや人工人間の理想的なパーツはどうなっていくんだろう?」という部分を真剣に考え、行き着いた先の真実に向かおうとしている部分では、すごくシンパシーを感じています。

                佐々木渉/クリプトンフューチャーズ サウンドデータベース開発

         『ユリイカ』(08年12月)「生みの親が語る初音ミクとアングラカルチャー」

 

初音ミクを通じて、これまで聞いたことのないマニアックな音楽に触れることができた人が多く生まれたのならば、文化として貢献できたのかもしれない。

                佐々木渉/クリプトンフューチャーズ サウンドデータベース開発

         『ユリイカ』(08年12月)「生みの親が語る初音ミクとアングラカルチャー」

 

(プロトタイプの初音ミクの)イラストのラフを貰った時、最初は女子高生の格好をしたものと、アンドロイド然としたものがあって、「これが歌うと言われても困るよなあ」なんて思ったんですよ(笑)

                佐々木渉/クリプトンフューチャーズ サウンドデータベース開発

         『ユリイカ』(08年12月)「生みの親が語る初音ミクとアングラカルチャー」

 

 (ニコ動の「はちゅねみく」動画について)昔でいうフリー・ジャズみたいなものですよ。フリー・ジャズのことを、作り込みの甘いジャズとは言わないじゃないですか?

                佐々木渉/クリプトンフューチャーズ サウンドデータベース開発

         『ユリイカ』(08年12月)「生みの親が語る初音ミクとアングラカルチャー」

 

ミクはミクとしてそーっとしておこうというか、あれは事件・事故の類で良いのかもなあとも思ってはいて。(中略)3年くらいしたら「初音ミク? そんなのもあったね」で良いんですよ。

               佐々木渉/クリプトンフューチャーズ サウンドデータベース開発

         『ユリイカ』(08年12月)「生みの親が語る初音ミクとアングラカルチャー」

 

 

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町内会の盆踊りで主婦が初音ミクのコスプレで踊ったところどうなったか

我が家の加入している町内会では、毎年夏休みに盆踊りを開催している。

ちょっと広めの公園に櫓を組み、公園内に電線と提灯を張り巡らせ、

屋台も出店させるなど、毎年盛り上がりを見せている。

といっても、年齢層に隔たりはある。

参加者の大多数は50代以上の地域のお年寄り。

そしてお祭り好きの小学生。

あとは、その小学生の保護者である親。

20代前後の若者にとっては、古臭い、しょぼい祭りなのだ。 

 

この盆踊りには、一つの恒例イベントがある。

それは、仮装盆踊り。

基本的には炭坑節などがずっと流れて、

みんな櫓の周りで円を描きながら踊っているのだが、

ある時間帯だけ、各地区別に住民の代表が、仮装して踊るのだ。

基本的に踊るのは、そこそこ年配の奥さん方。

まあ、一種の余興だ。

 

 

一昨年のこと。

私は妻から相談を受けた。

自分たちの地区の仮装について、何にすればいいか、という相談だ。

妻はたまたま幹事を務めており、

仮装の内容を決め、道具や衣装を揃える係であった。

前の年はAKB48の仮装だったが、今年は何にしようか。

そう悩む妻に、私は初音ミクのコス、もとい、仮装を提案した。

他に候補が思い浮かばなかったからか、その提案は、あっさりと承諾された。

メールで奥さん仲間に通達され、反対意見もなく、決定に至った。

 

ネットでコス、もとい、衣装を検索すると、

5000円くらいのものから2万円くらいのものまでたくさんあった。

妻が10着注文したのは、中でも安い価格帯のもの。

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で、当日。

残念ながら私は休日出勤の仕事が入っており、参加できなかったのだが、

その日の夜に、妻から話を聞かされた。

 

どこから聞きつけたのか、カメラをぶら下げた青年たちが、

何人もやってきたらしい。

中には、この自治体の住民ではないと思われる者もいたそうだ。

もちろん、こんな自治会の撮影にくる若者など、これまで皆無だ。

かれらは盆踊りの迷惑にならないよう、

気を使いながら端っこのほうで、しかし大型レンズで、

初音ミクのコスプレをした主婦たちの撮影に勤しんでいたという。

 

ところで、「主婦」といっても、その多くはアラフォーである。

20代は1人だけ。

私が言うのもなんだが、その中で美人と言えるのは、

あまく見積もって2〜3人だ。(そこに妻が入るかどうかは内緒)

でも青年は、熱心に撮影していたそうだ。

そして仮装盆踊りがおわると、おもむろに近づいてきて、

「おつかれさまです! いいですね、これからも頑張ってください」

と、わざわざ挨拶してから帰ったそうだ。

(妻は『悪いけど今後頑張るつもりはない』と返答したらしい)

 

また、例年盆踊りがおわると、衣装はそのまま捨てていた。

汗臭くなっているし、次の使い道もないからだ。

だがこの年は違った。

小・中学生の女子児童から「欲しい」という声が殺到し、

かなり高い競争率の抽選となってしまった。

こんなことは、前年のAKB48でも、翌年の「アナ雪」でも起こらなかった。

 

初音ミクは、不思議な存在である。

初音ミクを中心に、いろんな人たちの、

世代や性差や立場を超えた、コミュニケーションが生まれる。

それはなぜなのか。

これからも考えていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

書評『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』

 

www.ohtabooks.com

 

初音ミクについて解説された書籍で、いちばん「まとまった」一冊。

だいたいのことはこれで理解できよう。

装丁も鈴木成一デザイン室と、気合が入っている。

 

基本的には時系列に「初音ミク」を知ることができる。

 

DTMの登場

CDを買って聞く時代から、ネットでフリーで聞く時代への変遷

同人音楽の誕生による、音楽の民主化

クリプトン社の伊藤社長をはじめ、各関係者への取材を丹念に実施した、

「足で得た情報」は、読み応えがある。

個人的には、音声合成技術の歴史のくだりが特に興味深かった。

著者の素晴らしい仕事に、感謝である。

 

ただし、全面的に内容に賛同するわけではない。

著者は本書について、次のように述べている。

 

「ロックやテクノやヒップホップ、つまりは20世紀のポピュラー音楽の歴史にちゃんと繋げることを意図したものである」

 

もともと音楽ジャーナリストの方だから、ある意味いたしかたないのだが、

個人的には、音楽史のなかで『初音ミク』は語りきれないと考えており、

言及するにしても、ほんのすこしでよかったのではないかと思う。

 

著者は、20年ごとに「サマー・オブ・ラブ」という音楽上のカウンターカルチャーが生まれるムーブメントが起こり、60年代のウッドストック、80年代のクラブミュージックに次いで、2007年に初音ミク(ボカロ)が生まれた、という立場に立っている。

おそらく音楽業界に詳しい方にとっては、この説は興味深いものかもしれないが、一般人にとっては、そうかもしれないしそうじゃないかもしれない、どっちでもいいことではないだろうか。

(もちろん、否定しているわけでもない)

 

本書の最後の方に、著者とクリプトンの伊藤社長が「情報革命」というキーワードで対談しているが、本質はこっちだと思う。

情報革命の文脈で初音ミクを語り、ついでに「思考実験」程度に音楽史にちょこっとなぞらえるほうが、しっくりいくような気がするのだ。

 

ただし、上記の点は、私と著者との世界観の違いにすぎない。

 

これから「初音ミクって何? 知りたい」と思っている方には、

まず読んでみるべき本だと、おすすめできる。

 

私が初音ミクにはまる理由……《きっかけ編》

この1年、iPod初音ミクしか聞いていない。

約2年で、ミクのライブBlu-rayを6枚購入した。

 

実はブログ管理人は、いい年したオッサンだ。

年齢は内緒だが、都内の会社で管理職をしている。

娘も二人いて、一人は中学生だ。

(その娘が最近、私以上にミクにはまっている)

 

なんでこの年で、こんなにはまったのか?

 

きっかけは、2013年の正月にMXテレビが放映していた初音ミクのライブ特番。

正月番組にも飽きて、あてもなくザッピングしていた時に何気に目に入ってきた。

最初の印象は「なんだこれ?」

アニメでもない、着ぐるみでもない、何かが歌い、踊っている。

ホログラフ技術が確立されていないことは知っているので、すぐに、

それがスクリーンに投影したものであると冷静に理解できた。

と同時に、どうやらこれは「初音ミク」らしい、と理解した。

 

初音ミクの存在については、なんとなく知っていた。

最初に何で知ったか、雑誌だったか、テレビだったかは忘れたが、

とある企業の音声合成ソフトが異例のヒット商品となったニュースを、

何年か前に見聞きしていたからだ。

ただ、特に興味はなかった。

面白い話題だなとは思ったが、DTMに興味はなく、自分には関係がないと思った。

音楽や漫画、アニメはそこそこ好きな方だが、自分のアンテナにひっかからなかった。

(話は古いが「エヴァンゲリオン」が大ヒットした時も、なぜか関心がなかった)

 

それからおそらく3〜5年後、正月に自宅のテレビで遭遇したのだが、

一瞬で魅了された。

そう、私の場合、「耳から」より「目から」初音ミクに入った。

厳密に言うと、イラストなどのヴィジュアルではなく、

ライブで踊り狂うミク(とその仲間たち)に目を奪われたのだ。

 

いったい自分は、何を見ているのか。

目の前で笑顔で熱唱しているミクさんは、本当はそこには存在しない。

スクリーンに投影されている映像と、

スピーカーから流されている電子音だということは、大人じゃなくてもわかるだろう。

でも「そこにいる」としか思えない。

リアルかリアルじゃないか、ではない。

存在感があるか、ないかだ。

そして間違いなく、そのテレビの中のミクさんは、「存在」していた。

現に、その歌を聴き、踊りを見て、自分の心に幸福感が湧き上がっていることは事実だった。

こんなCGの絵と、訳のわからない歌詞とに、俺が心動かされる?

いったい自分が、何を見てそのように感じているのか、頭が整理できなかった。

 

こうした存在感を際立たせるもうひとつのファクターが、そのライブの観客たちである。

テレビでその観客たちがスクリーンのミクさんに、声援を送り、掛け声をかけている。

 

「おいおい、お前ら正気か!」

 

と、最初は思ったものだ。

そこには、誰もいないのだ。

なのに、会場が、ミクさんを中心に盛り上がり、一体感を生み出している。

なんなんだ、これは?

 

そんなことを考えていると、番組は終わった。

 

俺は何を見て、何に心を動かされたのか。

それを知りたいと思った。

そして、アマゾンで調べてみると、初音ミクのBru-Rayが発売されていることを知った。

レヴューを見まくり、一番評価が高そうな、1枚に目をつける。

 

3ヶ月後、ある仕事がうまくいったご褒美として、自分でそれを買った。

 

 

 その日から10日くらいは、仕事帰りに毎晩繰り返し見た。

嫁や子供が寝静まってから、1人でヘッドフォンをかけて、テレビの前にかじりついた。

3日目くらいに嫁が起きてきてばれたが(笑)、「俺の趣味だけど何か?」という顔で乗り切った。

 

そこから、Youtubeで曲を聴き、ツタヤでCDをレンタルし、iTuneで購入し、と、初音ミクにはまる生活がはじまった、というわけだ。

 

これがきっかけである。

 

さて、俺は結局、初音ミクの何に魅了されたのか。

そこに何を見て、何を感じたのか。

それについては、後日書こうと思う。

 

今日は最後におまけをひとつ。

初音ミクの造形について。

最初に見たときから(つまり、それほど関心がないときから)、造形は割と好きだった。

かっこよく、それでいて、なぜか落ち着く。

最初は、自分のセンスにあうのだろう、ぐらいに考えていた。

でも実は、それだけではなかった。

 

フアンの間では常識だが、初音ミクのデザインは、ヤマハシンセサイザー「DX−7」をモチーフとしている。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/03/YAMAHA_DX7.jpg

 

そのことを知って、「ああ、そうだったのか」と、納得した。

 

遡ることおよそ20年ほど前、俺の自宅には「DX−7」があったのだ。

自分のものではなく、兄が高校受験の合格祝いに親に買ってもらったものだ。

当時、坂本龍一やA-Haをはじめ、トップミュージシャンたちがこぞって使っていた、往年の名機種である。

兄も俺も、結局はそれほど使いこなせなかったが、ただただ、かっこいい機種だった。

いろいろ事情があり、その後10年ほどして手放すことになったが、

しばらく我が家の畳の部屋に鎮座して、兄と俺の楽器欲を満たしてくれていた。

兄がでかいケースに入れて、バンド仲間と演奏の練習に、よくいっていたものだ。

 

だから、なのだろう。

初音ミクを見たときに、なにか、かっこいいような、懐かしいような、

そんな気持ちになったのは。

 

誰にも理解してもらえないと思うが、自分的には、非常にアメージングで、

感傷的な気分になる再開となった。

 

 

勝手に『初音ミク』Blu-rayベスト1を発表する(後編)

先日に引き続き、独断で選んだ初音ミクBlu-rayのベスト1を発表する。

 

ベスト1は、、、、、、、

「HATSUNE MIKU EXPO in Newyork」だ。

 

この1位には賛同いただけない人もいると思う。

でも「勝手に選んだ」ものなので許してほしい。

 

1位に選んだ理由は、大きく分けて3つある。

 

1つは、曲のバランスが良いことだ。

定番曲から、比較的新しめの曲、そして英語バージョンと、多彩である。

『マジカルミライ』や『ミクの日感謝祭』などは回を重ねるごとに、新しい曲を取り入れていかざるをえない宿命にあり、ともすれば、「いい歌」より「新しい歌」が入る傾向にある。しかし本作では、ニューヨークのフアンに対する初のお披露目コンサートということもあり、定番の神曲が揃っている。

また、比較的会場が一体になって盛り上がれる曲(ポッピッポーや秘密警察)が多い。

 

2つめは、ミクさんのモデルが、くっきり投影され、存在感があること。

おそらく『ミクパ』モデルだが、こころなしか、体型はお姉さんになっている。

(顔のおさなさはそのまま)

おそらく、最新モデルは『マジカルミライ』だと思うのだが、やや希薄な印象を受ける『マジカルミライ』ではなく、『ミクパ』モデルを採用したことは、良かったと思う。

また、ステージ演出もなかなか楽しめる。『マジカルミライ』のような巨大スクリーンでも『ミクパ』のような2階建スクリーンでもない、平家建てのシンプルなものだが、見ていて飽きさせない、うまい演出が施されている。

 

3つめは、現地の反応である。

外国のフアンの熱烈な応援がちょこちょこインサートされるが、

「世界でもミクさんは愛されているんだ」と思うと、日本人として胸熱である。

約1名、奇声をあげる女性フアンがいるが、これはご愛嬌だ。

なお、特典映像で現地のフアンの盛り上がり、コンサート前や後のインタビューが収録されているが、これも見ていてすごく面白い。

自称「最高齢フアン」のオッさんが出てくるのだが、こいつが名言を吐くのだ。

 

「なぜそんな歳になってミクにはまるのか」だって?

 そりゃあ、俺が若い時にミクがいなかったからだよ。

 

その通りっすよ、先輩!

 

・・・とまあべた褒めしているわけだが、難点がないわけではない。

実は音響や歌声の録音状況(あるいはスピーカーの出力状況)が、いまいちなのだ。

特に鏡音レンの声は、ダミ声になっている。

ライブDVDで音声やよくないのは、考えてみると致命的である。

ただ、それを補っても、このブルーレイは、何度も見たくなる逸品である。

 

本当ならこの1位は、『マジカルミライ2015』になるべきだった。

『2014』の希薄さを解消する、プロジェクターの増設。

『2015』のキズキズスクリーンや、オタクのアップ映像もない。

完璧な『マジカルミライ』は、1位になるポテンシャルがあったはずだ。

なのに、カメラワーク、編集が、その全てを台無しにした。

ミクさんをよく見れない、いまいち盛り上がれない作品になってしまった。

 

技術の進歩も大事であるが、やはり最後は、作り手の「ミク愛」じゃなかろうか。

今でも「本当はこっちが1位じゃないか」と迷っている『最後のミクの日感謝祭』にしても『ミクパ』にしても、そうしたミク愛がビンビン伝わって来る。

 

この『MIKU EXPO』もそうだ。

 

しかし、なんとなくだが、『マジカルミライ』からはそれがあまり感じられない。

『2013』はまだましだが、そのあと2つは、正直どうかと思う。

 

次回の『マジカルミライ』を買うかどうか、正直迷っている。