初音ミク総研

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日本最年長ボカロP、死す

残念なニュースだ。

シンセサイザー奏者の冨田勲氏が亡くなられた。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

音楽業界やシンセサイザー界隈の人々にとって冨田氏は「レジェンド」と言える実績の持ち主だが、初音ミクフアンにとっても、忘れられない人である。

イーハトーヴ交響曲』で初音ミクソリストに起用したのが、冨田氏だ。

 

ascii.jp

 

すでに名声を得ている80歳を超えた音楽の大家が

初音ミクに真剣に取り組んだ、ということだけでもすごいことである。

 

イーハトーブ交響曲』が初音ミクフアンにとって、

受け入れられるものか否かは、重要な問題ではない。

世界的に見ても電子音楽の大家である冨田氏が、まじめに、野心的に、

音楽の新しいシーンを切り開こうとしての取り組みだったことは、

長く語り継ぐにふさわしい功績だと言えるだろう。

 

これは、客寄せのために音楽番組で初音ミクに歌わせるとか、

小⚪︎哲哉が初音ミクで曲を作るとか、安⚪︎奈美恵がコラボするとか、

そういう次元の取り組みとは明らかに異なる。

初音ミクの社会的地位を、大きく高めた偉業だ。

 

その冨田氏が亡くなったことに哀悼を表したい。

と同時に、本年11月に予定されていた『ドクター・コッペリウス』が心配だ。

これは、冨田氏が再度初音ミクに真剣に取り組んだ交響曲になるはずだった。

 

www.dr-coppelius.com

 

どこまで完成しているのかは知る由もないが、

「どうか、無事上演できるレベルにはなっていてくれ」

と願わずにはおれない。

 

初音ミクの「R3」は何がすごいの?

N響初音ミクのコラボを見た。

まずは、この企画を立案し、実行した皆さんに謝辞を申したい。

おつかれさまでした&ありがとうございました。

 

だが、しかし。

個人的にはいろいろ残念な気持ちになった。

 

わかってる。

ブログ主が勝手に妄想して期待値を上げていただけだ。

勝手に盛り上がって、勝手に落胆しているだけである。

その証拠に、ツイッター上でも、なかなか今回のコラボは好評だ。

みなさん、ご満足頂けているようである。

でも、ブログ主は本心から、がっかりした。

 

がっかりしたのは、曲や音に対してではない。

「ハジメテノオト」は「ま、あんな感じだろう」という予想の範疇だ。

そう書くと、とりたてて感動していないように思われるかもしれないが、

そのとおり。

これまで聞いてきた「ハジメテノオト」が、オーケストラ演奏になったからといって、

感動が何倍かになったかといえば、ブログ主は、そうは感じなかった。

平常運転でいい歌である。

 

何にがっかりしたかといえば、ミクさんの映像だ。

がっかりポイントは、何点かある。

 

その1。

ミクさんの映像、奥まったところにあるんだね。

これはある意味、仕方がない。

あの規模のオーケストラをはけるわけにはいかないから。

でも、客席からは、さぞ小さく、こじんまりとしか見えなかったことだろう。

 

その2。

ミクさんの映像、なんか、画質がよくない。

ブルーの色が全体にかかっていて、解像度もいまいちで、薄暗く、

「そこにいる感」が乏しかった。

 

その3。

これが一番の不服かもしれないが、「R3」って、結局なんだったの?

誰か、「おお、さすが『R3』だ!」と感動した人、いるのかな。

事前の告知だと、リアルタイムで状況に対応できるような説明になっていた。

だからてっきり、もう少しそれがわかる何かがあると期待していた。

しかし、少なくともブログ主にとっては、何も起こらなかった。

普段のマジカルミライ他と、明確に動きや反応が違っていたところを、

確認することはできなかった。

 

ひょっとしたら歌い終わってから何かあるのか、と思った。

たとえば、司会者や楽団員、客席とのやりとりがなされる、とか。

だが、それもなかった。

何もせず、ただ去っていった。

 

http://image.itmedia.co.jp/news/articles/1604/07/yx_miku_01.jpg

 

まあ、そうだよな。

そんなことをやってしまうと、

ミクさんがタートルトーク化してしまうよな。

 

http://blog-imgs-74.fc2.com/t/o/k/tokyo999888/20090926060541d01.jpg

 

ブログ主はミクさんもタートルトークも大好きである。

ただ、ミクさんがタートルトークになってしまうのは、ダメだと思う。

 

さて、話を元に戻して。

R3の何がすごかったのか。

誰かわかるひとがいれば教えて欲しい。

 

昨日の番組を見た範囲では、

「何かやってるみたいなんだけど、これって、劣化してない?」と、

落胆と不安しかない。

 

番組を見終わってブログ主と娘(中2)は、

「抽選に漏れても、まあ、これならよかったね」

と締めくくり、眠った。

 

 

 

 

【業務連絡】NHKに初音ミクが登場するので録画予約をお忘れなく。

ブログ主が抽選に漏れた『N響 CLASSICS×POPS with SPECIAL ARTISTS』の

オンエアの日時が発表された。

 

http://blog.piapro.net/wp-content/uploads/2016/04/P1604071-1.jpg

 

 

NHK総合 2016年4月9日(土) 22:30~23:44

 

曲目は「ハジメテノオト」で、

 

曲のアレンジも、モーツァルト風やベートーベン風、ブラームス風など、ブロックごとに『それっぽい』アレンジをしています

             by佐渡岳利エグゼクティブプロデューサー

 

とのこと。

ちょっと全然イメージがわかない。

聞いてみるしかないか。

 

あと、今回はただ歌うだけでなく、映像(演出?)面でも進化がありそう。

公式ブログには

弊社が開発した、リアルタイムで3DCGと歌声をコントロールするシステム、「R3」を使用し、事前に収録された「初音ミク」の3DCGモーションや歌声にあわせてオーケストラが演奏するのではなく、「初音ミク」が指揮者に合わせてリアルタイムに歌い・踊ります!!
指揮者の指示するテンポの変化・揺れ・加減速にも対応し、オーケストラと一体化したコンサートを実現!

と書かれている。

こちらもちょっとよくわかんない。

 

「R3」なるものがどの程度のものなのか、

それが今後のマジカルミライなどイベントのみならず、

初音ミクのコンテンツにどのような影響を及ぼすのか、

今から興味深い。

 

初音ミクを研究した文献要約《ユリイカ編Vol.4》

年齢16歳。身長158センチ。体重42キロ。コンセプトは、未来的なアイドル。クリプトンフューチャーメディア社が用意した初音ミクの公式設定はこれだけである。

 

有村悠(ライター)

 

 

初音ミクの歌声はチューニングを怠ると、中途半端に裏返ったような奇妙な響きになる。『恋するVOC@LOID』などの本格的なオリジナル曲が登場する以前は、その頓狂な声をネタ的に楽しむ動画が多く、そこから初音ミクをアホの子と見做す動きが生じた。

 

有村悠(ライター)

 

 

あらためてその魅力について一言でまとめていえばそれは〝可能性〟だと思う。その可能性を引き出す要素の一つに挙げられるのが、二次創作キャラクターを自由に生み出せるユーザー、企業双方の許容性の高さやVOCALOIDを持っていなくても絵や技術知識などで参加できる間口の広さ、先端技術をエンターテインメントに昇華できる懐の広さといった「自由度の高さ」である。

 

 

UGK(イイアクセス管理人)

 

http://ecx.images-amazon.com/images/I/41V30DGZxvL.jpg

ニコニコ超会議でミクさんが中村獅童と共演するとのことの不安と期待

www.itmedia.co.jp

 

ニコニコ超会議2016で、初音ミクが歌舞伎に挑戦するらしい。

まあ、ドワンゴの本社が歌舞伎座タワーにあるのだから、

いずれこういうコラボはあるんじゃないかと思っていたが、やや心配だ。

小説「千本桜」は読んでないのでどんな話かはしらないが、

ブログ主は、初音ミクの「千本桜」という曲は使い所が難しいと思ってる。

インパクトのある曲だが、そのぶん「なんじゃこれ?」と思われる率も高い。

もう少し一般の人にもなじみやすい曲があるのに、

千本桜を最初に聞いたためにボカロに対して「厨二病みたいな歌でしょ?」みたいな偏見を持たれかねない。

ただ、歌舞伎とコラボするのは悪いことだとは思わないし、

歌舞伎ならやっぱり千本桜が親和性が高いので、しょうがないかなと思う。

 

一方で期待もある。

今回、NTTの「kirali!」という最新音響技術が導入されるとのこと。

www.ntt.co.jp

こういう、日本の最新技術を初音ミクを使って実験&実証していくことは、

どんどんやってほしい。

いずれVRが普及すれば、遠隔地で臨場感あふれる音響を楽しむニーズは高まるだろうし、たとえば「マジカルミライ」を自宅で現地並みに楽しむこともできるようになるだろう。

もちろん、初音ミクに限らない用途でも有望な技術だ。

初音ミクがそうした技術実証の役に立てる、というのは、ミクフアンとして嬉しい。

 

また、今回の初音ミクと歌舞伎のコラボについて、一つだけ願いがある。

やるなら単なる話題作りでなく、真剣にやってほしい、ということ。

イーハトーブ交響曲」は、すごく真面目な取り組みだった。

www.youtube.com

これが興行的に成功だったかどうかはさておき、

真剣に取り組み、初音ミクの社会的地位を向上させたことは疑いようがない。

願わくは、このような意義あるコラボであってほしい。

 

 

 

プリガーになくて初音ミクにあるもの

ダイヤモンドオンラインの記事でこんなのがあった。

zasshi.news.yahoo.co.jp

 

ざっくりと要約すると、

トヨタプリウスの拡販に萌えキャラ(擬人化)を使ったが、盛り上がってない。

・このプロジェクトの企画者は萌えビジネスがわかってない

という記事。

実はブログ主も、こんな取り組みがあることを、この記事を読むまで知らなかった。

toyota.jp

ミク曲も数多く手がけているOSTER Projectが楽曲を提供しているのに、

ミク好きのブログ主さえそのことを知らなかったくらい周知されていないから、

失敗といえば失敗なのかもしれない。

 

でも、この記事の論調に、どうにもひっかかるものがあった。

記事の筆者に言わせると、「萌えビジネス」には成功するセオリーがあり、

初音ミクガルパン、艦隊コレクションはそのセオリーにのっとっているが、

プリガーはそうはなっておらず、研究不足で失敗したことになっている。

 

そうかなあ?

プリガーが失敗しているのか成功しているのかはさておき、

初音ミクは、萌えビジネスのセオリーにのっとったから成功したのだろうか?

 

結局、「萌えビジネス」で成功するためには、ターゲットの分析などのインプット、需要を的確に捉えて形にするアウトプット、両面において多角的な努力が必要だということだ

 

と記事に書かれている。

もちろん、クリプトンフューチャーは、努力しただろう。

でも、ターゲットの分析が正確だったり、需要を的確に捉えて形にしたから、

初音ミクが成功したとは、ブログ主は考えてない。

そんなマーケティング的なアプローチではなく、

クリプトン社が作りたいものを全力で作り、

それが運良く受け入れられ、育ててもらった、ということではないのだろうか。

開発者たちのインタビュー記事を読んでいると、そう思えてくる。

少なくとも、「需要を捉えて」初音ミクを作ったとは思えない。

「ネギを振り回すDX−7少女の音声合成技術」なんて需要、あるわけがないw

初音ミクは、計算で作れるような存在ではない、

奇跡と偶然の産物だとブログ主は考えている。

初音ミク以降のボカロキャラは、そこそこ計算して生み出したかも知れないが)

 

そもそも「萌えビジネスで成功するためには」という上から目線の発言が片腹痛い。

「じゃあ、お前がやれよ」と。

試行錯誤して頑張っている人に、結果論でダメ出しできるほど、この著者は偉いのか。

 

そもそも、初音ミクガルパンや艦コレと一緒に並べて「萌えビジネス」と一括りにしているところからして、この著者はボカロや初音ミクがわかってないと思うんだが。

 

トヨタは昔から、CMで初音ミクをうまく取り入れてきた。

www.youtube.com

www.youtube.com

 

トヨタがボカロの社会的地位を向上させた貢献度は、少なくないと思う。

 

今回のプリガーは、ひょっとしたら失敗だったかもしれないが、

サイトを見れば一目瞭然、相当気合を入れて取り組んでいる。

こういうパトロンは大事にすべきではないのだろうか。

それを「素人が萌えビジネスを安易に利用している」などと斬って捨てることは、

ブログ主としては賛同できない。

 

トヨタは、これからも、この手の取り組みにチャレンジしてほしい。

「需要が」「分析が」などと小難しいことを考えずに、

「これ、やりたい!」「これ、いいと思う!」ということに、

思い切って取り組んでほしい。

そうすればいつか、すごいものが生まれるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初音ミクを研究した文献要約《ユリイカ編 Vol.3》

印象論に過ぎないが、たいていのニコニコ動画上の楽曲は、iPodを通して聴くと約8割「劣化」してしまうのだ。つまりニコニコ動画上でコメント付きでその楽曲を視聴するほうが、圧倒的に「神曲」に聞こえてしまうのである。

 

濱野智史(情報環境研究)

 

 

初音ミクのブームが「声」によって駆動されたとはあまり思わないんですが。むしろKEIのパッケージイラストの効果や(中略)ニコニコ動画との親和性が大きかったのではないか。

 

東浩紀(哲学)

 

 

初音ミクは音楽的にも図象的にも日本文化のある種の鏡というかシュミラークル的な《場》としてあって、そういう逃げ水を追いかけるようなことが初音ミクについて語ることなのかなという気がしてきました。

 

編集部

 

21世紀の今日、「初音ミク」という名の存在しないはずの少女を共有する人々は、実のところ「目に見えぬ女の子との遊戯を通して、想像力が《別の現実》、物理的な現在とは異なった現実に達しようとする力」であることを発見し、それを獲得するためのレッスンを日々積んでいるのではあるまいか?

 

中森明夫(アイドル評論家)

 

 

http://ecx.images-amazon.com/images/I/41V30DGZxvL.jpg